― 境界を開くためのレッスン ―
矢野智司
「人間と動物との境界の作られ方を、人間と動物との境界に立つ子どもを中心において問うことで、人間と自然との支配的な関係論理を組み替え、さらに教育学的な思考法を刷新し、二一世紀の世界市民形成への新たな教育を拓く思考と感受性の形を考える。(……)本書は、問題の立て方を吟味するための思想と言葉とを、そして思考が向かうべき倫理の方向とを提案するものである。私はこれ以上に重要な思想的課題はないと考えている。(「はじめに」)」
目次:
はじめに
序 境界を生きる子どもの生態学――ジャン=ジャック・ルソー、あるいは人間/非人間の境界に立つ思想
Ⅰ 境界を犯して動物はやって来る
動物と人間の境界に出現するアート――鴻池朋子が示す境界を消滅させ生成させるアートの技法
越境する動物たちがもたらす贈物――『夕鶴』:異類の者が境界を越えてやって来る物語
境界を越える交感と心象スケッチ――宮澤賢治における他者に開かれる心象スケッチという方法
インターミッション 宮澤賢治と西田幾多郎をつなぐ
境界のはじまりに立ち返る身体の哲学――西田幾多郎の「物そのものとなって考え、そのものとなって行う」身体の技法
Ⅱ 境界のうえで踊る子どもたち
子どもと声の力――『風の又三郎』が描く世界の彼方から吹く風と息と声と
子どもの遊びに創造をもたらすメディアの力――子どもに異世界・別世界を開くメディア
境界に生起する「子ども」という多様体――「子どもの発見」をめぐる一八世紀フランス思想の思考実験覚書
Ⅲ あちらから贈与の先生がやって来る
境界において動物と子どもと教育とを再考する――人間/非人間からなる教育学の課題
境界を越えて先生がやって来る――純粋な贈与としての教育のはじまり
試論 生命のメタモルフォーゼと世界教育
46判・上製(カバー・帯あり)・口絵、全366頁 本体3400円+税
2024年7月刊行 ISBN978-4-86686-036-7 C3037