ハンセン病家族訴訟

―裁きへの社会学的関与―

黒坂愛衣・福岡安則

2016年2月、ハンセン病家族原告568名による
熊本地方裁判所への提訴。
原告の大半が匿名なのはなぜか?

ハンセン病家族たちからライフストーリーの聞き取りを
重ねた著者たちが明かす社会的差別の実相。

目  次

はじめに
ハンセン病家族訴訟にかんする動き

1 被害論■ハンセン病家族訴訟「意見書」〈黒坂愛衣〉
   はじめに
 1 差別の存在―「家族」にむけられた排除・蔑視と隔離政策
 2 差別の影響(1)―マイノリティ側の〈心理的負荷〉〈生き方の選択肢の制限〉
 3 差別の影響(2)―帰属カテゴリーを本人が〝自覚していない〟場合
 4 認識の四パターンと差別による影響

2 証拠論■ハンセン病家族訴訟「証人尋問」〈黒坂愛衣〉
 1 主尋問
 2 反対尋問―共通被害はあるか
 3 追加主尋問―現在も続く差別
 4 裁判官補充尋問―偏見差別を除去する義務

3 責任論■ハンセン病家族訴訟「意見書」〈福岡安則〉
 文体の問題、もしくは一つのエクスキューズ
 「加害集団」という用語法の妥当性
 《集合的意識としての偏見》の形成
 偏見の内面化
 偏見とは何であって、何でないのか
 《差別的加害行為》と《集合的意識としての偏見》の相乗作用
 公権力による《差別的加害行為》の発動
 地域社会に偏見を煽った「入所勧奨」「強制収容」「消毒行為」
 隣保ぐるみの「決議文」
 終わることなき結婚差別
 国家機関までが就職差別
 優生政策=生まれる権利そのものの剥奪
 小括
 問いの追加
 「伝染」も「遺伝」も近代医学の用語
 前近代では「遺伝」ではなく「家筋」と観念されていた
 「強制隔離政策」「無癩県運動」以前の偏見のありよう
 ハンセン病の偏見はなくせるか
 「肺病」への偏見も「狐憑き」「犬神憑き」への偏見も消失
 〝浮浪癩〟のラベリング
 〝慈悲深き皇室〟シンボルの利用
 日本の啓発活動は的を外してきた
 「正しい知識」の修得と「差別的態度」は無関係―同和問題意識調査結果
 社会啓発では当事者の体験談が最も効果的
 啓発効果を測定しない国や行政の啓発事業
 「対等地位の接触」もしくは「出会い、ふれあい、語らい」
 偏見解消のための実効性のあるプラン
 国や地方自治体の役割
 さらなる問いの追加
 「家族を語る」から「家族が語る」へ
 外側から「加害」と見える振る舞いも被害ゆえ

4 支援論■ハンセン病家族訴訟にかかわって〈福岡安則〉
  はじめに―鳥取訴訟判決への怒りから
 1 家族訴訟の争点―社会的差別と偏見を明かす
 2 判決―“画期的な部分”と“不満な部分”
 3 判決後の課題―偏見差別を解体するには
  おわりに―ハンセン病家族たちの経験を社会で共有していく

四六判・並製・全320頁 本体3000円+税 
2023年2月刊行 ISBN978-4-86686-030-5 C3036